2009.02.01

'cordially'って確かに「真心を込めて」なんだけど

近ごろ、高校生プロゴルファー君が何でも由緒あるゴルフトーナメントに招待されたとかで、ニュースになってます。わたくし、ゴルフは知らないので、フツーならそのままスルーするところですが、そのゴルファー君が記者会見か何かで紹介していた招待状の言葉に引っかかりました。

どうやら、招待状には'cordially invite(s) you'と書いてあったようですが、それを彼は「「真心を込めて招待する」と書いてあった」と説明していたわけです。もちろん、辞書には'cordially'の訳語として「真心を込めて」とか「誠意をもって」とか載っていたのでしょう。ここまでは問題ありません。

さて、問題は、これを日本語に直すとして、しかも招待状の日本語として訳すとして、どういう表現にするか。「招待する」を形容する言葉として「真心を込めて」ってのはいただけません。日本語学習者がそういう作文書いてきたら多分直されます。わたくしなら直します。もともと、招待状なんてのは紋切り型の言葉遣いをするものなんですから、訳としては、言語の意味に振り回されずに「謹んでご招待いたします」とかそういうのが適切だと思うわけです。

件のゴルファー君は、まだ高校生だし、こういう時の訳語についてあまりとやかく言うべきではないんですが、これをきっかけに「真心を込めて招待します」なんて日本語が流行りだすなんてことになったらちょっと嫌かもしれません。年末に流行語大賞なんかになってたらもっと嫌かも。

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2007.12.22

その後のiPod touch

音楽プレーヤーとして動作する時間よりも、PDAとして動作することが遥かに多い、わたくしのiPod touchですが、今度単体で(というのはMacBookなしに)旅行に持って出ようと思い、充電アダプタのことを調べていたら、Appleのページでこんな記述を見つけました。曰く、

充電には高電力型の USB ポート (コンピュータに装備された USB ポートなど)、または、iPod touch 付属の AC アダプタをお使いください (別売)。

「付属」のACアダプタが「別売」って一体どういうことよ、と思って、対応する英語のページを見てみると、

Use a high-power USB port such as the one on your computer, or use your iPod touch AC adapter (sold separately).

とありました。日本語で表現するなら「iPod touch用ACアダプタ(別売)」をお使いください、ぐらいかなと思ったりしますが、ここは多分、その前の「your」を気を利かせて訳したときに、うっかり「付属」のという訳語を当ててしまったのでしょう。

あ、こんなことしてる場合じゃなくて、別売ACアダプタのこと調べとかないと。

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2004.07.02

迷訳・誤訳: an affair

これは、誤訳というのか分かりませんが、読んでて吹き出してしまったところ。

「その研究に関係していたとき、かれは『人民日報オンライン』のデータから、経済発展に関するデータによくアクセスした。」

He often accessed the data about economic development from the data in the People's Daily Online when he had an affair with the research project.

'when he had an affair'って、ま、確かに「関係していたころ」なんだけど、これって異性関係とかに使うことが多いんじゃないかと思ったり。そうでない文脈にも使えるのかもしれませんが、わたくしなら、こういう表現は避けます。

ところで、『人民日報オンライン』って、中国語、英語、日本語、フランス語、スペイン語、ロシア語、アラビア語で情報を提供しているのですね。日本語以外はよく考えたら国連の公用語だったりするわけですが、これってもしかすると世界でもっともマルチリンガルなニュース・サイトかもしれません。

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2004.06.30

迷訳・誤訳: in use

ぼちぼち再開している迷訳・誤訳シリーズですが、今回は'in use'。コンピューターを使っているのは誰かという話をしているところを想像して、次の英文を見てみてください。例によって、事実に基づいた作例です。

*The people that are not in use do not use them (=computers), but they cannot use them.

問題は、'the people that are not in use'が「(コンピューターを)使っていない人」の訳になるのかということです。ここでも、日本語の関係節に見事にだまされちゃってる感じがします。

  • コンピューターを使用中の山田さん
  • 山田さんが使用中のコンピューター

あるいは、

  • コンピューターを使っている山田さん
  • 山田さんが使っているコンピューター

を考えてみましょう。表面的には、「使用中の〜」や「使っている〜」と同じ表現に見えますが、格関係が違うので英語にするときには訳し分けないといけません。

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2004.06.23

迷訳・誤訳: とくに(続き)

この二つ前のポストで紹介した

* The authors did not conduct questionnaires above all about the users because we they thought of as directly tenuous with this case.

この英文。実は「とくに」のほかにもう一つおかしなところがあります。どこかというと、'because we thought of as directly tenuous with this case'という下りです。「利用者については、本件とは関連が薄いと判断し(たため)」に該当する部分で、'think of ... as ...'というフレーズを使っているわけですが、後半の'...'は埋まっているけど、前半の'...'が埋まってない。なんで?

The authors did not conduct questionnaires about the users, which we they thought of as ....

と間違えたのかもしれません。

【追記】

例文中の'we'は'they'であるべきでした。迷訳・誤訳シリーズでは、実際に生成された誤用例から、誤用のポイントだけを抜き出して作例しています(オリジナルの誤用例をここに引くのはよろしくないもので)。そんなわけで、たまーにこういうことが起こります。

それと、久し振りに復活したので、この際に注記しときますが、このシリーズの例文は、翻訳を生業にしている(とおっしゃる)方がお金を取って翻訳(日本語→英語)した訳文に基づいています。あしからず。

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迷訳・誤訳: 'community'じゃないってば

語彙レベルのことにはあまりとやかく言う気はない、とかって前に宣言したことがあったのだけど、別の意味でびっくりした訳語を発見したのでご紹介。

'community area'って見たら何のことだと思うでしょうか。世の中にはcommunity area networkを推進するCANフォーラムというのがあるし、「お隣り近所」とか「町内会」の話をしてるんだったら、英語としてはムリがないんじゃないかと思います。

でも。

この原語は「共産圏」だったのです。わたくしが学生の頃はソ連などと共産主義諸国がまだあった時代(といっても、学生のうちにソ連は分解した)だったので、いくらその思想に反対する人であっても、「共産圏」を'community area'を訳しちゃう人はいなかったんじゃないかと思いますが、今となっては、もはやベースラインの知識でもなくなっちゃったんでしょうか。まあ、相手が悪かったという説はぬぐえないけど。

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2004.06.22

迷訳・誤訳: とくに

「とくに」をどのように訳すかというのもけっこう曲者です。誰の解説を読んだか忘れてしまったし、そもそも、この記憶が正しいかどうかも確信がないのですが、「とくに」を'especially'と訳すのはよろしくない、とかって主張した文章を読んだことがありました(マーク・ピーターセンだった気がします)。

「筆者らは、利用者については、本件とは関連が薄いと判断し、とくにアンケートを行なわなかった」

という原文に対応するものと思って、次の訳文を読んでみてください。

* The authors did not conduct questionnaires above all about the users because we thought of as directly tenuous with this case.

ヘンなところは2つありますが、根本的な原因は、日本語の「とくに~ない」というのは、言い換えれば「わざわざ~ない」とか「大して~ない」(とくに美しくはなかった)ということになるので、「とくに」訳す必要がない場合がある(この場合なんかそういう感じ)のに、ムリに訳してしまっていることにあります。

が、よせばいいのに、'above all'なんかを使って訳そうとして、ムリが二つ(あ、三つかも)出てしまっています。

'above all'というのは、そもそも単独で使うものではなくて、前後の文脈の中で、他のことと対比して上で、中でもとりわけ何かが大事だ、ということを示すためのものです。じゃあ、ここでは何と対比してるのかなーと思っても、対比の対象がありません。ムリその1。

それから、否定表現の中に'above all'が突っ込まれているのもキモチ悪い。もしかすると、「わざわざ~ない」に対応するものとして、'not ... above all ...'というのを選択したのでしょうか。こういう英文もあるのかもしれませんが、典型的な例文が思い当たりません。

あれ?もしかして'at all'と間違えたのか。

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迷訳・誤訳: 全体を管理する

久し振りに、このコーナー。もう見る必要もないのですが、改めて以前訳者さんに頼んだ英文を眺めてて面白いものをみつけたので、シリーズを復活してみます。

ある組織の内部構造についての文書があって、その組織の中に「全体を総務的に管理する部門」があるという表現があったと思ってください。今回引っかかったのは、この「全体」でした。訳出個所を見てみましょう。

*the department to manage the entirety executively

ん~、なんで「全体を」が'the entirety'になるかな。確かに、「部分性と全体性」みたいな話をしていれば、そう訳すこともあるとは思うけど、そんな賢い文章じゃないですし。この場合は「組織の全体を」という意味なんだから、「組織を全体的に管理する」とかってやればよいのではないかと思う次第。

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2004.03.30

迷訳・誤訳: 泣き別れとたすきがけ

「言語学習ストラテジーの大半は、実際の言語使用というよりも、人間の知識と情報処理という抽象的な側面に関わるものと考えられている」という日本語があったとして、その訳だと思って次の文を読んでください(くどいようですが、翻訳を商売にしてる人が出してきた英文です)。

*The majority of language learning strategies are rather taking part in the abstract sphere related to human knowledge and thought as information processing than taking part in actual language use.

原文も決して明晰とは言えない書きっぷりなのですが、ここでは、人間の「知識と情報処理」でひと括りとすべきところ、「知識」と「情報処理」が泣き別れてしまっています。形容詞や前置詞句や関係節がどこまでかかっているかを判断するのは結構難しい場合があるので、それだけなら別段気にしません。

それから、'take part in...'は、「ぼくは地域のボランティア活動に関わっている」という文なら「関わる」として使えないわけじゃないでしょうから、「~に関わる」の訳にあてちゃったのも、百歩譲って見逃すとしましょう。でも、'rather ... than'の間に挟まれた'thought as information processing'の立場は?!

これ、カッコで表現すると、

  ( a , b, { c, d ), e, f }

という状態です。あるいは、疑似プログラミング言語的に書けば、

  FOR
    a
    b
    WHILE
      c
      d
    NEXT
    e
    f
  END WHILE

って感じになっちゃってるってことです。たすきがけというか、なんというか。

さて、件の英訳、逆向きに訳すと、「言語学習ストラテジーの大半は、人間の知識に関する抽象的な側面に参加しており、情報処理として考えられるものであって、言語使用に直接参加するものではない」ってところでしょうか。ホントは、スコープ誤りがあるから訳しようがないけどね。

例えば、

The majority of language learning strategies are thought to relate to human knowledge and information processing, rather than actual language use.

とかでどうでしょう。もっとも'relate to ...'は人間関係を表すために使われることが多いみたいですが。

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2004.03.29

迷訳・誤訳: including、再び

アジアにおける民主主義の問題点に論じた文章の一部だと思って(台湾の総統選挙もあったことだし)、↓を読んでみてください。

*Although there is the attempt of demonstrating the potential under the Asian conditions, it is not sufficiently clarified in including the developing countries.

「アジアの条件の下で、(民主主義の)可能性を示そうという試みもあるが、途上国も含め、まだ十分に明らかにされていない」と読めるでしょうか(これも誤用の様子を味わってもらうために、実際の翻訳者の訳文を改変したものです)。

ここにも、変なincludingがあるのです。in including developing countriesは「途上国を含め」でしょうか。inの後にいきなりincludingが来ているのは、文法がどうこういう以前にキモチ悪くないのかな。「投票を棄権することを含め」というようなのを、*including to withdraw the voteとか、「活動家が抗議デモを行なうことを含め(予め対策を検討する)」というようなのを、*including that the activists make a protest demonstrationなんて訳してあったのも見た気がします。思い出したくないけど。

ところで、冒頭の文、includingだけじゃなくて指示関係もちょっとヘン。英語は日本語と語順が逆とかってよく言いますが、それは構文的な話。たまに例外的な修辞で使うぐらいはいいとして、意味的にはやっぱり前から後ろへと順番に読んでいって自然に理解できるように訳すほうが無難ですよ。

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迷訳・誤訳: ひと休み

oolongteajpg/oolong←昨年夏(2003年夏)に行った中国出張のときお土産に買ってきた烏龍茶のパッケージに書いてあった日本語(是非クリックして拡大画像を見てください!)。

「翻刻」すると、「烏龍茶悠久なゐ栽培技術の歴史と特殊な加工工藝べ世界中にその名を馳せハています、本品は本場の福建安渓特特級烏龍茶茶を精選したもので、柔和な黒く光ゐ光沢、馥鬱たゐ清らガな香リ、艶とレて透明な茶の色、喉ぇを過きても残ゐ潤へ、そレて特殊な“烏龍茶韵”レ韵は韵と同レ゛を備ぇ、何度もお茶を入れハ飲めます。に最も価値あゐ天然飲料と言ぇまレすう。」

「“烏龍茶韵”レ韵は韵と同レ゛を備ぇ」の部分と「に最も価値あゐ」の「に」がそれぞれ何を表わすのか不明なのですが訳してみましょう。国史学(という言葉が大学に残っていた最後の世代です、わたくし)を専攻していた友人はきっとこういう気分だったのですね。

「烏龍茶悠久なる栽培技術の歴史と特殊な加工工藝で世界中にその名を馳せています、本品は本場の福建安渓特特級烏龍茶茶を精選したもので、柔和な黒く光る光沢、馥鬱たる清らかな香り、艶として透明な茶の色、喉元を過ぎても残る潤い、そして特殊な“烏龍茶韵”の韵は韵と同じを備え、何度もお茶を入れて飲めます。(に)最も価値ある天然飲料と言えましょう。」

OCRを使うとこういうことはよく起こりますが、文字組みの様子からみても、制作の過程でコンピューターを使ったような気配はないんですよね。日本語をかじった人がやったとしても、中国では依然として日本語学習者も多いし、こういう文字レベルの取り違えをする人はそもそも消えつつあると思うのですが。

ときに、ようやくここ2週間ほどぶちきれながらやっていた翻訳の直しが終了しました。というか、時間切れで強制終了。文字の誤用と文法の誤用という違いはありますが、わたくしにとって元の訳文は、この烏龍茶パッケージの日本語と同レベルに見えていたことを申し添えます。

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2004.03.28

迷訳・誤訳: areas that the realization was expected

例によって実際の誤用に基づいた作例です。「電化はソビエト化の過程で実現が期待された分野の一つだった」(古い!)という日本語があったとしましょう。これを、

*Electrification was one of the areas that the realization was expected in sovietization.

と訳したとします。ところで、'areas that the realization was expected'というのは、'areas that were expected to be realized'の間違いじゃないでしょうか。好意的に解釈して、thatをwhereかin whichと取り違えたと考えてあげても、realizationはelecrificationの中で生じる出来事じゃないのでキビしい気がします(これが、realizationじゃなくて、developmentとかevolutionだったらいいかも)。あ、せめて、'areas whose realization was expected'ならいいのかな。

でも、こういう間違いが結構多いところを見ると、根本的に日本語の関係節構造と英語の関係節構造の違いに気づいていない人が多いのでしょう。次の例文を考えてみます。

「ソフトバンクがADSL事業に3,000億円を出資した」(最初8,000億円って書いてましたが、3,000億円ぐらいでした)

このとき、

出資したソフトバンク
出資したADSL事業
出資した3,000億円

という表現はどれも成り立ちます。ところで、もとの文にはガ格、ニ格、ヲ格がそれぞれ出現していますが、関係節構造では修飾される名詞の格が標示されません(日本語としてはまったくもって文法的です)。したがって、少なくともシンタクス的には「ソフトバンク」、「ADSL事業」、「3,000億円」が元の文に戻したときに、どのような格標示をもっていたかが分からないのです(もちろん、「出資する」という動詞の意味と、それが取ることのできる格を知っていれば分かる)。それなのに、もとの文脈を十分理解しないで、適当に機械的に訳してしまっているケースが少なくありませんでした。信じられん。

上記の例は、シンタクス的にはどれも似たような構造をもっているわけですが、意味構造は違うし、英語にするときは、意味を反映して適当な(テキトーなではなく)構造に落とし込まないといけません。ところで、「推薦する」というような動詞の場合には、もっと厄介です。

「推薦する田中くん」

といったとき、「田中くん」はほかの誰かを推薦したということでしょうか、それとも、ほかの誰かに推薦されたということでしょうか。どちらもありえます。

「佐藤くんを推薦する田中くんは、ぼくの古い友人だ」と言えば、「田中くん」はほかの誰か(佐藤くん)を推薦したということですし、「ぼくが推薦する田中くんは、英語はなってないが留学の意欲には溢れている」と言えば、田中くんはほかの誰か(ぼく)に推薦されたということになります。実は、日本語は関係節を単純に使うと意味が不明瞭になるので、それ以外の方法によって格関係が決定できるように表現することも少なくありません。

なんでまた、こういうことをくどくど書いているかというと、今、泣きそうになりながら直している英文(翻訳を生業にしている翻訳者が訳した英文)、こんなレベルの間違いだらけなのですよ。

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2004.03.27

迷訳・誤訳: 具体的

用語のことは話題にしないというのは、特定の分野の専門用語のことなので、そうではない言葉の訳についてはきちんと言葉を選んでほしいですね。まあ、文脈によって訳し分けるにしても一貫性は必要ですから難しいときもあります。翻訳者によっては「原文のニュアンスを残しました」とかって逃げる人もいるのかな。

「具体的」って、英語にしにくい言葉の一つですね。今回仕事をお願いした人(何人かいる)は、ほとんどそのまま'concrete'ってしてきましたが、まあこれでは使えませんね。っていうか日本語の「具体的」の意味が広いから、'concrete'にうまく当てはまるケースがあまりないってことだと思います。'specific'とか'actual'とか、もしかすると'itemized'なんて言っちゃってもいい場合もあるかもしれません。

そう言えば「事業に資金を投じる」に、'cast'って言葉を使ってきた人がいました。「賽銭箱に小銭を投げ入れる」みたいなときならいいかもしれないけど、さすがにこの場合は使えないですよ。多分。

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迷訳・誤訳: including

「現在コンピューターの直販をしているメーカーとしては、Dell以外には、HPとIBMがよく知られている」という日本語があったとしましょう(実際には直販メーカーはもっとありますが、この際そういうことには目をつぶってください)。それを、

*At present, HP and IBM including Dell are known as direct-sales computer manufacturers.

訳したとしましょう。こういう'including'の使い方がちょっと引っかかるんですよね。というのは、'We will all have to work, including me.'(英辞郎 on the webの例文)のように、'all'という集団の中には'me'も入ってますよ、というようなときに'including'が使えるのであって、「AとBとC、それからD」のような列挙には使えないはずなんじゃないかと思うからです。「DELLを含む直販コンピューターメーカーは……」みたいな場合ならincludingで問題ないでしょうけど。

こういう次元の間違いからいちいち直さにゃならんので、結構大変です。

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迷訳・誤訳: 掲載?

今回は苦言ではありません。用語の選択のことなので。

専門用語は、それこそ分野によって大きく異なるし、上がってきた翻訳の訳語がこっちの期待と一致するなんて思ってません。というか、そういう必要があるときには訳語リストを作って予め渡すのが仁義でしょう(少なくとも、これまではそうしてきたつもり)。でも、どんな分野であっても、「これはありえない!」って誤訳もあるんだけど。

ということで、訳語の違いは深く気にしていなかったのですが、どうしても不可解なものがありました。「ホームページに情報を掲載する」というときに、'insert'が使われていることがあったのです。'insert'がもつ語感からしても、どうもピンとこなかったのですが、ようやく思い出しました。「新聞広告を掲載する」場合には、確か'insert'を使うことがあるんでしたね。なるほど。

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2004.03.26

迷訳・誤訳: is contributed to...

*The author will discuss what kind of information disclosure is contributed to the Internet.

という英訳があると思ってください。もとの日本語は「インターネットがどのような情報公開に貢献したかを議論する」というものだったと思ってください。これでは、好意的に解釈しても「どのような情報公開がインターネットに貢献したか」という意味になってしまいます。っていうか、'contribute'ってあんまり他動詞っぽく使わないですよね。「~を寄付する」みたいなときは別として。

自動詞(的な言い回し)を無理やり受け身にしているのも結構多いんだよなあ。

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迷訳・誤訳: 状況可能と能力可能

可能表現には、状況可能と能力可能の二つがあるということがあります。英語では、'be able to ...'で表現され、後者は'can'で表現する、というようなことをことを、むかーし習ったのを思い出します。

能力可能というのは、「ぼくはクロールで1500メートルを一気に泳げる」なんていう場合です。

状況可能は、「(上司が怒鳴り散らした直後で、みんなが静まり返っていたので)とてもお花見のことは言い出せなかった」とか、「(これまで一所懸命男子シンクロの演技を練習してきたけれど、意中の女の子の前では恥ずかしくて、)披露できない」なんて場合が、これに相当するでしょう。

実際にはネイティブでも、この二つの可能表現を厳密に使い分けているわけではないと思いますが、実はもう一つ問題があります。日本語の「~できる」には、そのいずれにも該当しないものがあるのです。「みんなのおかげで、この仕事を終わらせることができました」なんて場合です。仕事を終わらせることが可能であっただけでなく、実際に仕事を終わらせたということを言っているのです。

こんな場合は、'be able to ...'も'can'も忘れて訳してください。プリーズ。

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迷訳・誤訳: has been decreasing

例えば、「(トリインフルエンザの影響で)昨年は、鶏の数が減少している」という文があったとします。それを、

*The number of chicken has been decreasing.

と訳したらどうでしょうか。

日本語のテイル形は、動詞によって「進行中の動作を表わす」場合や「ある動作によって生じた結果の残存を表わす」場合の両方があります(他にもあったかもしれませんが、いますぐに思い出せない)。動詞がデフォルトで表現する動作の状態のことをアスペクトと言いますが、英語に訳すときには日本語の動詞のアスペクトにしたがった訳し分けが必要です。逆向きの訳でも同じことです。

場合によっては、英語の完了進行形ってやつに一致することもあるでしょうが、「昨年は、鶏の数が減少している」という場合には、「まだまだ鶏の数が減少しつつある」ということではなくて、「鶏の数が減っちゃった」ということですから、せめて'The number of chicken had decreased.'とか、単純に考えるなら'The number of chicken decreased.'でよいのではないかと。

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2004.03.25

迷訳・誤訳: Euro-American companies

「欧米企業」は *Euro-American companies だそうです。まあ、世の中にはそう訳すべき例がないとは思わないけれど(フィリップスとかシーメンスとか)、普通は違うでしょ。'companies from Europe and America'とか'European and American companies'とかでは駄目だと思ったのか。

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迷訳・誤訳: the number of people available for it

*the number of people available for it

'it'とはここでは「インターネット」のこと。「インターネットを利用できる人の数」の由……

原文では、もう少し入り組んだ言い回しの中に「それを利用できる人の数は限られていた」みたいな表現があるのですが、好意的に解釈しても「インターネットが人びとを利用する」みたいな状況でしかこういう言い回しは成立しませんねえ。

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迷訳・誤訳: with a central focus on

翻訳者への苦言の続き。面白そうだから、シリーズでやってみます。カテゴリまで新設しました。

例えば「日本を中心とした先進国」なんてのを訳すのに'with a central focus on'なんて言葉を使えるのでしょうか。

*developed countries with a central focus on Japan

こういうときの「中心とした」にはあまり深い意味はないと思うので、'developed countries, such as Japan'とか、'Japan and other developed countries'と言ってしまえばいいことも多いのでは?

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